牙龍 私を助けた不良 上
いまいち理解できていない戒希と桃華に視線を移し、歩夢は目を細めた。
そんな時だった。病室の扉がノックなしにスライドされて、
「迎えに来ましたよー、狼姫さん」
灰色フードを被った少女──シャドウが入ってきた。アウェイな空気に気付いているのかいないのか、気だるげな声で歩夢を──狼姫を呼んだ。
「ご苦労様」
「「(誰・・・?)」」
彼女が誰だか分からず首を傾げる二人を他所に、歩夢は
「迎え来たから帰る、またね」
そう言って、病室の開けられた扉のある方を向くと、足早に出て行った。
そしてシャドウもまた、失礼しましたーと、伸びた言葉を残して足早に歩夢を追い掛けていった。