牙龍 私を助けた不良 上
重たい沈黙が部屋を包む。──そんな時だった。
『にゃっ』
「ルナ、どうした?」
気配が無いくらい大人しかったルナが、突然姫蝶の膝の上から身を起こした。
「ルナ、一体どうし「姫ちゃんっ!!!」
姫蝶の声を遮って、朱里が叫びながら入って来た。手には、彼女のメガネと同じ桜色のケータイが握られていた。
余程焦って来たのか、激しく息切れを起こしているようで、肩が上下に動いている。
「──緊急事態か?」
姫蝶は、鋭く朱里を見つめている。視線の先は、桜色のケータイだった。
朱里が姫蝶にケータイを渡そうとすると、それがけたましい音を立てて鳴り出した。