牙龍 私を助けた不良 上



抱き上げると、バスタオルを他にも三枚程持って、リビングに直行する。


凜華を下ろすとタオルを一枚敷いて、座らせる。シャラッと、凜華の胸元でネックレスが揺れた。


ミライのために、空調を整えているので部屋は温かいが、凜華はまだ震えている。


華は彼女をしっかり拭くと、使っていないタオルを巻いてやり、また抱上げて彼女の部屋に向かう。


その隣を、ミライがトタトタと小走りで付いて行った。


彼女の私室は、タイマー式の空調が付いているから温かく、華は箪笥から服一式を見繕うと凜華に渡した。



「凜華、ひとまず服を着なさい」


「・・・ん」


「紅茶を淹れてくるから、着たら待ってて」


「・・・ん」



俯いたまま顔を上げようとしない凜華に、華は不安を覚えながらもそこから離れた。


雨の降りしきる音が、あの日と似ているような感覚もしていた。



< 447 / 476 >

この作品をシェア

pagetop