牙龍 私を助けた不良 上
ところが、指示を出すはずの姫蝶は今現在、先ほど話をしていた少年と共にいなくなってしまった。
探しに行ったのだろうけれど、当てはあるのかと入れ違いに帰ってきた狼姫は思った。
姫蝶は当ても無く動くような人ではないが、今回はそんな悠長なことを言っていられる状態じゃない。
雨の中で、しかも夕方という時間帯に一人の人間を見付け出すのは困難だ。
カフェテリアの至る階から外に向けて付けているカメラを見ているが、目当ての人物は映らない。
そんな時、朱里のケータイが鳴った。
「はいはい。───うん、・・え、見つかった?・・・」