牙龍 私を助けた不良 上
* * * * *
彼女は、憂いげに泣いていた。全てが分からないまま、彼は彼女を見つめていた。
雨の中であっても、彼女の涙はよく映えていた。悲しそうで、嬉しそうだ。
「──雨はいつも、私をあの日を思い出させる」
「──三年前の」
「彼がいなくなった日に、私は・・・・、・・ただ苦しかった」
「・・・・・」
「殺したいくらい憎かった。全て、」
傘はいらない、と言って雨に濡れている少女は疲れたように、地を向いた。
黒銀の髪が雨に濡れて、月のような銀色に光り輝いている。
涙のように美しいそれは、全てを物語る。
「駆け付けた時に、あの場所に残っていたのは、致死量に近い血痕、哀しみの狂気」
「────」
「無力だった。守りたいものを、守ることが出来なかった」