牙龍 私を助けた不良 上
──三年前のあの日。
会わせたい人が居るんだと、彼女は言われた。自分の足で歩き出したかつて仲間だった男から。
はにかんだような笑みを浮かべているだろうと、電話越しでも分かるくらい、彼の声は楽しげだった。
『あの、明日の昼間に会いに行っていいっすか?イブの方は、仲間と倉庫で過ごすんで』
『あぁ、いいぞ。いつもの場所で待ってる』
『じゃあ、あんたが好きそうなものでも土産に持っていきます』
『楽しみにしておく』
それが、彼女が彼と交わした最後の会話。日付は、12月24日だった。
そして、その約束は一生果たされないモノとなり、彼は若くしてこの世を去った。
「──なら何で凜華に会いに行かないんだ、あんたは」
「──行けないんだよ」
行かないのではなく、行けない。その言葉に隠されたのは、彼女の後悔。
唯一、あの日の出来事を一部始終まで知らされ、そして知った彼女は、誰よりも悔やんで泣いて叫んで──求めた。