牙龍 私を助けた不良 上



──記憶に巣食った悪夢は、未だに消えることを知らない。


心にぽっかりと空いた空白には、きっとあの日に置いてきてしまった心の一部があったのだろう。


自分でも分からない『置き去りの破片』は、私を酷く弱くする。


そして、痛みを感じる時は確かにあるし、喪ったって感じかする。


だけど、私にとっては『怖さ』が勝ると言える。


──喪われるんだって、分かってる。


──二度と戻らないことも分かってる。




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