牙龍 私を助けた不良 上
暗い部屋に浮かび上がる星空をベッドに寝転んで見上げながら、見つめて彼女は言った。
「──時間がないんだ、早急に頼む」
『・・・オレは無駄な仕事はやんないんだけどー?つーか、夜中に何なの?』
気だるげな声に、少女は小さく溜め息を吐いた。
分かってはいたが、彼女はやる気が出ないと仕事をやらない。
そして、報酬がないと依頼を仕事として受け取らないから、困ったものだ。
『つーかさ、オレよりあんたの方がよく知ってるっしょ、姫蝶』
「私にだって知らないことはあるよ。それに、今は『姫蝶』として、お願いしてる訳じゃないんだよ」
『・・・へぇ、珍しいねぇ』
何やら楽しげな声に、少女は星空に向かって指を向けた。
家庭用のプラネタリウムは映し出す星空を、ゆっくりと変えていく。
何度もみるうちに覚えた、王道十二の星座を、星と星を見えない線で繋いで描く。
ふらふらと頼りなく指先が光を指しながら、移動する。