牙龍 私を助けた不良 上




「お前、どうして戦ってる?」


「理由はねぇ」



本当のことだった、嘘つく理由も無いしな。すると、女は何かを考えるような顔をして、俺の手に触れてきた。


ビックリしながら見ると、小さいてでそっと労るように撫でていた。



「自分を傷付けるような戦いならするな。むなしいだけだ」



ボソッとそう言って、ポケットから白いハンカチを取り出して、俺の血塗れな手を包んだ。


白いそれは、血が染み込んですぐに赤くなる。女は俺の顔を見上げた。



「お前は強くなれる」


「え・・・?」


「大切な物を見つけて、それを守れる奴になれ。力だけが強さじゃない」


「・・・・!!」


「力が弱くても、大切な物を守ろうとする心を持ってる奴の方が本当に『強い奴だ』」




< 75 / 476 >

この作品をシェア

pagetop