牙龍 私を助けた不良 上
「お前、どうして戦ってる?」
「理由はねぇ」
本当のことだった、嘘つく理由も無いしな。すると、女は何かを考えるような顔をして、俺の手に触れてきた。
ビックリしながら見ると、小さいてでそっと労るように撫でていた。
「自分を傷付けるような戦いならするな。むなしいだけだ」
ボソッとそう言って、ポケットから白いハンカチを取り出して、俺の血塗れな手を包んだ。
白いそれは、血が染み込んですぐに赤くなる。女は俺の顔を見上げた。
「お前は強くなれる」
「え・・・?」
「大切な物を見つけて、それを守れる奴になれ。力だけが強さじゃない」
「・・・・!!」
「力が弱くても、大切な物を守ろうとする心を持ってる奴の方が本当に『強い奴だ』」