嘘カノ生活
やっと彼女の言っていることを理解した俺は、喫茶店の他の客が軽く振り向くくらいの声をあげた。
すると夕菜ちゃんは携帯の通話口を抑えて、静かにしてください、と小さく怒った。
静かにって言われたって、無理な話だ。
さっき嫌ですと言われた頼みを、急に受けるなんて。
それでも彼女は会話を続けた。
「詳しいことはまた今度話すね。ん、ごめん。…あ、もしもし間宮さん?」
話し相手が朝未ちゃんから壮に変わったようで、少しだけ夕菜ちゃんの声が強くなった。
…親ばかっぽいよな、と余計なことを考えてみる。
「はい、はい、本当ですよ。そういうわけなんで、今後ともよろしくお願いします」
…どういう訳だ。
「はい、じゃあまた」
そういって夕菜ちゃんは電話を切り、俺に携帯を返した。