嘘カノ生活
「これでよかったですか?」

「いや、俺は助かったけど…。急になんで?」

 
 
朝未ちゃんの二の舞になりたくないって、心配かけたくないって。

そう言ったのは彼女自身なのに。

 
 
「そうですねー、気が変わったんです」

「は?」

「だから、気が変わったんですってば」

「なんで?」

 
俺がそう聞くと、彼女はふわりと、軽い笑みを見せた。



「…内緒です」



その表情が本当に、大人びて見えて。

一瞬、朝未ちゃんの事を忘れさせてくれた。

 

「…ありがとう。朝未ちゃんに嘘ついてまで、ごめん」

「だって高村さん、諦めるって決めたでしょ?」

「…うん」

「だから、それ、手伝います。ていうか手伝わせてください。早く忘れられるように」

「え?」

「…忘れるには、次の恋も大事だと思うんです、よ?」

「え…、それどういう…」

 
 
俺、こんなに国語力なかったっけ、と思った。

それだけ彼女の言葉を理解するのが難しかった。

だけどそれを教えてくれる事もせずに、夕菜ちゃんは立ち上がった。


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