嘘カノ生活
「じゃ、あたし行くね」

 
 
立ち上がろうとしても、動かない身体。

今も少し震える足。 

  
 
不都合だ。

気づかれたらいけないのに。

心配かけてはいけないのに。



こんな風に話していると、泣きたくなってしまう。

迷惑をかけるとわかっているけれど。
 
 
 
 
「…柏木、なんかあった?」

「な、何もないよ。最近働きすぎて、疲れちゃって」

 
 
それに、関谷は直ぐにあたしの嘘を見抜く。 

 

「あほか、震えてんぞ。働きすぎだってこんな震えないだろ」

「…本当に働きすぎただけっ」

 

強情を張るあたし。

だって、バレちゃいけない。

そうしたら関谷は心配して、慰めてくれて。

あたしはきっと泣いてしまう。


 
泣いたら、誰かに甘えたら、もうこの恋は終わる。

別に本当にそういうわけじゃないけれど、そう思っていないと他にすがれる物がなかった。
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