嘘カノ生活

　
「なあ、何で俺の事見てくれないの？」

「え…？」

「さっきからお前、一回も俺の目見てないよ」

　
　
関谷はしゃがんであたしと目線を合わせてくれている。

それなののあたしは俯いたまま、関谷の顔を見れないでいた。　
　
　
　

「ごめ…」

「ごめんじゃわかんない」



あたしの言葉に重ねるように言う関谷。

　
　
「もしかして、"間宮"のこと？」

　
　
　
"間宮"

その名前を聞いた瞬間、今まで我慢していたのが馬鹿みたいに、一気に視界がぼやける。　
　

涙、と気づくのに少し時間がかかった。
　
そしてそれは止まる事を知らず、地面に落ちていった。

　
　
「柏木…」

「ち、ちがう…っ。なんにもない…！」　
　
　
鼻を啜りながら、途切れ途切れで。

全然説得力のない言葉は、発しても意味を成さなかった。

　
拭っても拭ってもボタリボタリと落ちる涙。

一生止まることはないんじゃないかと思えるくらいだった。　
　
　　
　

　
「…なんでそんなにあいつが良いんだよ」
　
そうボソリと聞こえた後、とても強い力で引き寄せられて

苦しいくらいに、抱きしめられた。