嘘カノ生活
9.何も知らなかった
昨日は関谷に送ってもらって家に着いたから、特に絡まれることもなかった。

 
だけど今あたしは、教室ですごい剣幕の夕菜に絡まれている。 

  
朝、あたしが教室に入るや否や夕菜が近づいてきて、睨まれた。

すごく不機嫌そうで、すごく怒った顔。
 
 

 
「…朝未」

「な、何?」


それから、いつもの少し高めの声とは裏腹の、低い声。 
 
誰がどう見たって、その様は確実に怒っている。

 
 
「関谷に聞いた」


更に真剣な声で、夕菜は関谷の名前を口にする。 
 
その名前を聞いて、夕菜が怒っている理由をなんとなく理解した。
 

 
ふと教室の窓際で友達と喋っている関谷の方を見る。

苦笑いをしながら顔の前で両手の平を合わせて、ゴメン、と口を動かす関谷。 
 
 
関谷も夕菜がここまで怒るとは思っていなかったんだろう。

 
 
「あたしが怒ってる理由わかるでしょ?」

「うん、ごめん…」
 
 

昨日関谷も言っていた。


"お前が1人で抱え込んでるほうが心配だって。酒井も絶対そう思ってるだろうし"

< 222 / 321 >

この作品をシェア

pagetop