嘘カノ生活
あたしがそう言うと、あたしと夕菜は机の上の鞄を持って、直ぐに学校を出た。
いつもの駅までの道を歩き、あの間宮さんといつも通っていた歩道を通り、電車に乗る。
切符を買って、改札を通る。
電車に乗ると、会話は少なくなった。
これから、間宮さんに会いに行く。
以前まではそう難しいことではなかったのに、今は覚悟を決めないと会えない。
それは間宮さんが怖いからだとかそういう事ではなくて、どうしても別れの言葉が付いてくるから。
「……」
電車が揺れる、一定の振動。
あたしと夕菜は席には座らず、ドアに2人もたれ掛かって立っている。
夕菜は多分あたしを察して、何も喋らない。
だからあたしも喋らない。
その沈黙も、苦痛ではなかった。
けれど、これから会うことに対してはすごく緊張している。
手には汗が滲んで、心臓の拍動1回1回が重い。
正直、帰りたい気持ちもある。
それが顔に出ていたのか、無言だった夕菜はあたしの顔を下から覗き込んで言った。
「…大丈夫?あたし、あんなに行こう行こうって言ったけど、朝未がどうしても嫌ならやめるよ」
「…」
帰りたい気持ちも、勿論ある。
けれど、緊張は間宮さんに会うためには仕方が無い事で、いつかは会わなければいけない事だ。
「平気だよ。話、したいもん」
これくらい、我慢する。
そう決めた。