嘘カノ生活
けれど、ふと思い出したのはあの時。

 
間宮さんはあの時、震える腕と声で、"お前はいなくなるな"と声を絞るように言った。 
 
すがる様な抱きしめ方と雰囲気。

 
今この事実を知った上で思い出すと、もうそれはお兄さんの事以外ありえなかった。 
 
 
 
 
あたしは、膝の上でぐっと握りこぶしをつくる。

 
何も言えなかったことを悔やんだ。

抱きしめ返すことも出来なかった。 
 
 
 
「…間宮さん、会いたい」


 
純粋に、会いたいとそう思う。

好きだけど怖い。

拒絶されるのが怖い。

別れたくない。

そんな考えは消え去って、ただ純粋に会いたいと思った。
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