嘘カノ生活
折角ここまできたのに、帰るしかないんだろうか。
ここまでして会えないなら、もうそれはそういう運命だったんじゃないかとさえ思ってしまう。
ついさっきまで、あんなに純粋に会いたいと思っていたのに。
肩を落として、その場所に背を向ける。
すると、後ろから声が聞こえた。
「もしかして、誰かお探しになってる?」
顔だけ振り向くと、ポストを閉めて郵便物を持った彼女が、あたしの方を向いていた。
そしてもう最終手段で聞くしかないと思った。
この人に、ここの住民の人に聞けばわかるだろうと。
そう思いあたしは身体を彼女の方へ向けた。
だけど、先ほどまで彼女が開けていたポストのネームにふと目をやると、声が出なくなる。
そこに書いてあったのは、紛れもなく、"間宮"だった。