嘘カノ生活
 
 
どうして、この人が間宮さんのポストを開けてたの?

どうして中の郵便物を、彼女が持ってるの?


手が震えてきた。

あたしはそのポストから、目を離せなくなっていた。

 
さっき見た時、彼女がポストを開けていたからネームが見えなかった。

そう考えれば間宮さんの名前が見つからなかったことも、納得ができる。

 
 
だけど…
 

 
「あ、えと…」

 

ようやく声が出たと思っても、目線はポストから離れない。

気が動転して、聞きたいことも聞けない。 
 
 
そして彼女もあたしの様子に気づいたのか、先ほど彼女自身が開けていたポストを見る。 
 

 
「もしかして…壮?」



やだ…

やだ、やだ、やだ。

壮って呼ばないで。

呼ばないで…


そう心の中で繰り返す。

嫌な予感が、頭を駆け巡る。

けれど間宮さんを信じたくて、声を精一杯出す。 
 
 
 
「あの、失礼ですが間宮さんの…ご家族とかでしょうか」 



そうであって欲しいと願った。

そうじゃなければ、あたしはどうしたら良いんだろう。


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