嘘カノ生活
「壮がいなかったら、あたしは…」

 
そう言い放った彼女は唇を噛み締め、あたしを見下していた。

 
もし間宮さんがいなかったら、自分は幸せになれない。

そう言いたかったんだろうか。

つまり、やっぱりこの人は間宮さんとそういう関係の人だという事で。

 
けれどあたしは、彼女から目を逸らす事をしなかった。

別にそうしたらどうなるという訳ではない。

それでも、逸らしたくなかった。

 
 
「あたしは…あたしは…!」


 
だから、彼女の様子がおかしいのにも直ぐに気づいた。

彼女の手から、郵便物がばらばらと音を立てて落ちる。

それなのに拾おうともしない。

 

「いや…やだ…祐平!祐平!」

「え…?」

「やだ!やだあああ!!」


 
異常な雰囲気。

彼女はとても大きな声で叫んで、持っていた鞄も地面に落とした。

無論、それを拾おうとはしない。

その場に蹲って、耳を塞いだ。

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