嘘カノ生活
あたしはそんな彼女に対して、どう反応していいか判断できずに居た。

ただただ、呆気に取られて見ている。

 
 
「祐平、祐平ー…」

 

それから、祐平、という名前。

誰の事だかわからなかった。

 
 
「あ、あの…」

「やだ!やだ!」

 

あたしがいくら話し掛けても、彼女はそれの一点張りで他に何も言わない。

尋常じゃないと思いながらも、彼女に少しずつ近づく。

 
1歩、また1歩と。

 
触れる距離まであと数歩という時、彼女は突然鞄を手繰り寄せ、中に手を居れ何かを探し始めた。

  
それと同時に、階段を下りるような足音がする。

足早で、急いでいる様な音。

それはだんだんと迫ってきて、あたしも少し身体が固まった。

彼女を見つつ、階段の方にも目を配る。

 
 
そしてそこから聞こえた声は、ずっとずっと聞きたかった、あの声だった。 
 
呼んでほしかった名前は違えど。

 
 
 
「沙織さん!」



 
「…間宮さん……」

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