嘘カノ生活
「その子許さない…絶対…!」
背後から声が聞こえて振り返ると、沙織さんは立ち上がっていた。
そして手に何か持っている。
そのものを確認した途端、あたしは動けなくなった。
「幸せになんか、ならないでえ…!」
その先端をあたしに向け、数メートルの距離を走り出す。
持っているのは、小型のナイフ。
先程鞄の中を探していたものはそれだった。
避けようと思ったって、身体は聞いてくれない。
たかが数メートルの距離、直ぐにそれは縮まった。
「………っ!」
ぐっと歯を食いしばり、強く拳を握り、目を固く閉じた。
そしてその瞬間、何か大きなものに包まれた。