嘘カノ生活
痛みが感じられない。

それどころか、やわらかい、温かい。

それからとてもキツく。


固く瞑っていた目を細く開けると、目の前は真っ暗だった。


自分は、死んだんだろうかと思った。

けれどそんなのは直ぐに掻き消される。
 

 
包むように、抱きしめられていた。

間宮さんの匂い。

強く押し付けるように、間宮さんの胸にあたしの顔が埋まっている。

必死に顔を抜き、上を向いた。



「間宮さん…」


 
そして次の瞬間、間宮さんがあたしに体重をかけて覆い被さる。

それを支えきれなくて、2人地面へと倒れこんだ。



「間宮さん、間宮さん…」



下から抜け出して何度呼んでも、荒い息遣いしか聞こえない。

間宮さんの顔から吹き出てくる汗。

 
背中には、ナイフの柄。
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