嘘カノ生活
 
 
あたしは俊介くんがそれ以上何も言えないのを見て、代わりに訊ねた。


 
「間宮さんは、…助かったんでしょうか」

 
 
正直あたしもそれを聞くのは怖かったけれど。

 
 
「大丈夫です。ナイフは本当に小型の物でしたので、重要な器官までは到達していませんでした。
出血も死の危険に至る程ではありません。
安心してください。無事ですよ」
 
 
 
医師は、しばらくの沈黙の後そう言って微笑んだ。


その言葉を聞いて、ずっと張り詰めていた空気と気持ちが途切れた。

パンクしそうなほどに詰まっていた気持ちに穴が空いて、不安がどこかへ流れ出す。


 
「ありがとうございます…!」



そう言ってあたしと俊介くんは何度も頭を下げた。
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