嘘カノ生活
幸せそうに笑う2人を見て、俺にもあんな人が欲しいと。

いつの間にか、沙織さん自身にそれを求めていたと。

間宮さんはそう話した。

 

「でも別に、どうにかしたいっていう気持ちにはならなかった。2人の仲を壊すなんて絶対ありえないと思ったし」

「はい…」



きっとあたしが間宮さんと同じ状況下に居ても、同じだったろうと思う。

気持ちを伝えたって、関係が壊れるだけだ。

それに正直、もう話せなくなる事、お互いぎくしゃくしてしまう事の方が嫌だと思った。


再び繋がれていた手が、さっきよりも熱を持つ。

それでもあたしはその手を固く結んだまま離さなかった。
 
 
 
「自分が沙織さんを好きだって気づいてからも、今までと変わりなく3人で出掛けたよ」

 

不謹慎だろ、そう言って自分を嘲笑う間宮さん。

あたしは首を横に振った。


あたしを見て微笑んで、間宮さんの手に力が入る。

少し痛かったけれど、それは言わなかった。

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