嘘カノ生活

何か言おうと思っても、無理だった。

その立場に立ったことのないあたしには、何も言えなかった。


それから間宮さんは、その後の話を始めた。


沙織さんに以前までの笑顔は消え失せ、力なく笑うようになった事。

必要最低限の会話以外しなくなっていた事。

 
あたしはその時の沙織さんの気持ちも考えた。

大切な人を亡くしたら?

もしあたしが間宮さんと永遠に会えなくなったら?

沢山考えた。



「俺が死んだ方が良かったんじゃないかと思った」



間宮さんは消え入るような声でそう言った。

あたしはそれを聞いて間宮さんの腕にしがみ付く。



「…それは、いやです」



俺が代わりに。

つい先程あたし自身もそう思った。

自分の代わりに誰かが死ぬなら、いっそ自分が。

そう思ったのに、間宮さんがそれを口に出す事が悲しかった。

 
あたしが腕にしがみ付いたままでいると、やっぱり間宮さんはその片方の大きな手であたしの頭を撫でる。

それから「ありがとう」と呟いた。

あたしは絡めていた手をゆっくり離す。
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