嘘カノ生活
「俊介にも、誰にも言わなかったけど…本当馬鹿としか言い様がなかった。
沙織さんが俺を祐平って呼ぶ度に祐平の代わりに笑って答えてさ」
それが、1番良いなんて事有り得なかったのに。
そう言った口調は恥じるような嘲るような、そんな風だった。
間宮さんは片方の手で頭を掻き、顔を伏せながらその日々の事を話す。
3人で行った場所とかにも行った。
沙織さんの家に、泊まった事もあった。
だけどずっとずっと俺を祐平って呼んで。
沙織さんの中に俺…「壮平」はどこにもいなくて。
でも、ある日突然我に返ったように俺を軽蔑した。
間宮さんはそう言った。
俯いて髪で表情は良く見えないけれど、
時々隙間からちらつく顔は、とても悲しげだった。
「突然…って?」
「本当に突然、何の前触れもなくだよ。
俺が沙織さんの家に泊まって、朝起きたら"どうして壮平がいるの。
壮平なんかいらない"って」
「そ、そんなの…」
そんなの。
そんなの…
沙織さんがひどい?
一瞬そう思ったけれど、本当にそうなんだろうかとも思った。
誰がひどくて、誰が可哀相だなんて事、あたしには分からなかった。