嘘カノ生活
「間宮さん、あの、1つ訊いて良いですか」
「ん?」
「…どうして、あたしだったんでしょうか。
どうしてあたしを嘘の彼女に選んだんですか?
沙織さんの事を忘れたかったから、ですか…?」
忘れる為なら別に誰でも良かったんじゃないだろうか。
その問いに一瞬だけ間を置いて、間宮さんは声をだす。
思い出すような素振りと一緒に。
「違うよ。朝未を選んだのは、っていうより…お前を好きになったのは、沙織さんとは関係ない」
「…嘘じゃ、ないですか?」
「嘘じゃねーよ。ちゃんと、お前自身を好きになった」
その言葉を聞いて、ほっと安堵する。
間宮さんはまた思い出す様に天井を仰ぐ。
「SASAKIにバイト入った時も、シフトが良く被ってたやつに告白されて。…その後も7人ぐらい立て続け。
俺超モテんじゃん、とか天狗になってた」
「な、7人って…全然知らなかった…」
あたしが驚いてそう言うと、間宮さんは吹き出すように笑って微笑んだ。
それが馬鹿にされたみたいで、「なんですか」と怒り気味に言う。