嘘カノ生活
間宮さんは喉の調子をわざとらしく整えて、少し高い声で言う。
「別れないなら、あんたをあたしと同じ目にあわせてやるから」
おどけた様に声を出した後、元の声に戻って「だってさ」と肩をすくめた。
直ぐには理解できないかったけれど、やっと意味を解読する。
間宮さんを沙織さんと同じ目に合わせる。
あたしを殺して、間宮さんを同じ悲しみに陥れる。
理解はできたけれど…
「そ、そんなの嘘かもしれないじゃないですか」
「だな。でも実際あの時刃物は持ち歩いてた」
「そうですけど…」
「嘘みたいだけど、あの人はやり兼ねないんだよ。沙織さんは俺を…」
そこまで言って言葉を止めた。
苦笑いを浮かべている。
そしてそのまま押し黙ってしまった。
あたしは1人その言葉の続きを考える。
好き、ではない。話の流れからしても。
1番妥当なのは、「憎んでいる」。
少なくとも間宮さんを非難する言葉だ。