嘘カノ生活
俊介くんは笑顔で間宮さんが何か言うのを待っている様だ。
睨むように、それから思いきり嫌そうに間宮さんはゆっくり口を開いた。
「…ごめん」
耳を澄まさないと聞こえない程度の音量でボソリと呟く。
きっと、その"ごめん"の主語は、"何1つ説明しなくて、黙っていて"だとあたしは思った。
「ほんとにね」
俊介くんも責めるような言葉を返したけど、それは言葉だけで、口調はとても優しかった。
そしてぐしゃぐしゃと間宮さんの頭を撫でると、間宮さんは控えめな怒り口調でやめろよ、と言う。
いつもならきっとこんな事をされたら殴るでもするのに。
拗ねたように言うのは自分が悪いとわかっているからだ。
それが可愛く見えてしまって、思わずあたしの口から声が漏れる。
「ふふ」
「…お前も笑うな」
間宮さんは恥ずかしそうにあたしを見て凄む。
けれどそれさえも怖くなんかない。
「じゃあ、あたしは夕菜に連絡入れてくるので、2人で話しててください」
間宮さんがあたしを引きとめようとしたのは分かったけれど、あたしは気づかないフリをして手を振った。
病室を出ても、俊介くんと間宮さんが言い合うのが聞こえる。
他の病室の人に迷惑かからないようにしてください、
と心の中で注意しつつも何だか嬉しくて、顔がほころばない様に力を入れて公衆電話まで歩いた。