嘘カノ生活
二人で中庭にあるベンチに腰掛ける。

あたしと沙織さんの間には、少しの距離。

少しの沈黙の後あたしは何を聞いて良いのか、手探りで話を始めた。 

 
 
「あの…聞きました、祐平さんの事」


 
あたしの言葉にびくっと肩を震わせる。

それにあたしもびくりとした。

心の中では怖くないと思っても、身体はそうではないようで。

それでも沙織さんの言葉を待った。

 
 
「そうですか…」



数秒して聞こえた声は、消え入るような声。

待っていてもだめならと、質問を重ねる。
 
 
 
「あの時は、家族じゃないって言ってたけど、お義姉さん、ですよね?間宮さんの…」

 
 
祐平さんの婚約者だったなら、間宮さんとも繋がりは出来る。

それを聞くと、首を振った。

 
 
「まだ、籍は入れてなかったから…」

「あ…」

「だから今はもう、間宮のお家とは繋がりはないんです」

 
 
本当に、何もかも失った人なんだ。

祐平さんもいなくなって、まだ夫婦じゃなかった沙織さんたちは、なんの関係もない他人に戻って。

本当に、全部を失ってしまった人。
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