嘘カノ生活

そのまま数分立ち尽くした後、重い足取りで間宮さんの病室へと向かった。

 

「あ、朝未。遅かったね」



あたしが中に入ると、椅子に腰掛けた夕菜が振り返る。

間宮さんや俊介くんもあたしに気づくと「おお」と声をだす。

そしてその言葉に少し無理をして笑顔を作り答えた。

 

「うん、ちょっと知り合いに会って」

「知り合い?あの綺麗な女の人?」

「あ、えっと…」
 

 
女の人という単語にぴくりと身動きが止まる。

間宮さんはあたしのそんな行動を見逃さなかった。

視線が刺さる。

あたしは目を合わせる事ができない。

 
 
「…もしかして、来てた?」

「…はい」

 

沙織さんには来ていた事は言わないでと請うたけれど。

おかしな威圧感があったから、間を開けてから肯定した。
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