嘘カノ生活

こんな事はあたしが言ったって、だめなのに。

沙織さんが直接言わないと伝わらないのに。

ダメだよ、ちゃんと分かりあわないと。

 
そう思うと無性にやるせなくなって、また泣きたくなる。
 
間宮さんはしばらくの無言の後、一息だしてから微笑んだ。

 
 
「お前の顔」

「え?」

「そんな表情、初めてみる」

「は、はい?」

 

支離滅裂な言葉に、先ほどまでの気持ちが緩む。



「そんな顔してたんだろうな。あの人も」

「沙織さんも…?」



そう言われて、あの時の沙織さんの表情を思い出すと、

確かに今にも泣き出しそうな顔をしていた。
< 298 / 321 >

この作品をシェア

pagetop