嘘カノ生活
「朝未、ちょっとこっち来て」

「こっちってどっち…?」

「俺にくっつくの」

「え?で、でも…」

「ほら、良いから早く」



催促をされて、仕方なく立ち上がって間宮さんの傍へ行く。

元々だってそれ程離れていなかったのだから、くっつけなんて言われると本当に近い。

2人の距離はもう10センチもなかった。

こんなんじゃ鼓動が間宮さんに届いてしまいそうで。

それが更にドキドキを増長させる。

 
そんな気持ちを他所に、間宮さんは立ち上がったあたしを見上げて、再び頬に触れた。
 
 

「な、触りたい」

「も…もう触ってます」

「じゃなくて、ここ」

 
 
そう言って先程と同じ様に親指で唇を触る。


間宮さんは本当にずるい。

こんな時に真剣になって、恥ずかしい事を自然にやってのけて、あたしを惑わす。
< 303 / 321 >

この作品をシェア

pagetop