嘘カノ生活
エピローグ

「間宮さーん、起きてください。朝ですよ」



あたしはそう言って寝室で眠る間宮さんに声をかけた。

リビングからはコーヒーの香りが微かに鼻を掠めている。



「うー…ん」

「ほら、もう9時だよ」



 

あれから5年。

あたしは大学に進学し、去年無事に卒業をした。

間宮さんはと言えば、大手企業に就職し、割かし忙しい日々を送っている。

忙しくて眠いのは分かるけれど、昨日9時に起こしてと頼まれたからには、起こさないわけにはかなかった。



「コーヒー冷めちゃいますよー」



そして、今はこうして同じ家に住んでいる。

結婚は、まだ。

それでも同棲しているのは、あたしが大学を卒業したと同時に間宮さんが

「一緒に暮らそっか」と言い出したのがきっかけ。
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