嘘カノ生活
 
 
抱きしめられていたあたしを関谷から離して、間宮さんはあたしの手を強く握って歩き始めた。


「あの、痛いです、間宮さん…」


強く強く握られた手から、あたしの鼓動が間宮さんに伝わったしまいそうで。




 
「おい!待てよ!」

と、そう叫んだのは関谷だった。

 
「そこの…間宮とか言うやつ!」


珍しく関谷が怒り口調で言い放ったのは、間宮さんの名前。

「あ?」
 

それが気に入らなかったのか間宮さんも対抗し始めた。


「お前…柏木のなんなんだよ!」

「は?彼氏だっつったろ」

「でも、柏木は…」

 
 
「ちょ…関谷」

朝の事言うつもりなんだろう。


"お前、あいつと付き合ってんの?"

"答えづらいとゆーか…"


でもそれは、言ってほしくない。

伝えてほしくない。

間宮さんには。


けれど。

あたしはそれを止める術を知らなかった。 
 
 
「柏木は、付き合ってないっていってんぞ!」

< 43 / 321 >

この作品をシェア

pagetop