嘘カノ生活
聞き間違いだと、願った。


どうしてですか、間宮さん。
 


"柏木さん"

そんな風に言う間宮さんの目は、怖いほど据わっていた。

 
 
「え、と…」
 
声が上手く出ない。

あきらかに動揺している自分が居る。

 
 
 
「すいません、なんでもないです。お疲れ様でした!」

ようやく出た言葉は僅かにだけど震えていた。
 
もうその場にはいられなくて、あたしは走って逃げ出した。
 
 

もう、あたしの事なんとも思ってないんだろうか。

間宮さんはあたしよりも2つ年上で、大人だから。

こんな風に直ぐに忘れられるんだろうか。 
 
 
 

行き場のない想いは、ただただあたしの胸の中をまわっていた。
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