嘘カノ生活
どうしようどうしようどうしよう!
あたしの頭はそれ一色だった。
あんな一瞬の事見てるなんて。
しかもあの間宮さんに。
なんて考えてるうちにバイト終了の時間はやってきてしまう。
気が重い。
かつてこれまで気が重いことなんてあっただろうか。
そう思うくらい間宮さんと会いたくなかった。
「……」
ふと、至極簡単な逃げ道を考え付く。
そうだ、会わないうちに帰ってしまおう。
なんて思ってたあたしがバカだったのかもしれない。
「おーい、朝未帰るぞ」
近くから聞こえてきた悪魔をも連想させるような声。
…会ってしまった。
「あの、なんで名前で呼ぶんですか」
「なんでーって、俺ら付き合ってんじゃん」
その瞬間にざわめきだすSASAKI内。
ああ…本当に。
明日からどうしよう、これが知れ渡ったらバイトの女子達に何て言われるんだろう。
憂鬱になる原因は、もちろん目の前のこの人。
「あの、あたし付き合うなんて言ってな…」
言い終わる前に耳元でささやかれた。
「え、び」
「はい、一緒に帰ります!」
―――最悪な人に、最大の弱みを握られました。