嘘カノ生活

どうしようどうしようどうしよう!

あたしの頭はそれ一色だった。

あんな一瞬の事見てるなんて。

しかもあの間宮さんに。


なんて考えてるうちにバイト終了の時間はやってきてしまう。

気が重い。

かつてこれまで気が重いことなんてあっただろうか。

そう思うくらい間宮さんと会いたくなかった。


「……」


ふと、至極簡単な逃げ道を考え付く。

そうだ、会わないうちに帰ってしまおう。


なんて思ってたあたしがバカだったのかもしれない。

 
 
「おーい、朝未帰るぞ」

近くから聞こえてきた悪魔をも連想させるような声。


 
…会ってしまった。
 


「あの、なんで名前で呼ぶんですか」

「なんでーって、俺ら付き合ってんじゃん」


 
その瞬間にざわめきだすSASAKI内。

ああ…本当に。

明日からどうしよう、これが知れ渡ったらバイトの女子達に何て言われるんだろう。

憂鬱になる原因は、もちろん目の前のこの人。


 
「あの、あたし付き合うなんて言ってな…」

言い終わる前に耳元でささやかれた。

「え、び」
 
「はい、一緒に帰ります!」
 


―――最悪な人に、最大の弱みを握られました。
< 8 / 321 >

この作品をシェア

pagetop