届かぬ出ぬ声。
憐さんと女の人が帰って。
「盗み聞きは感心しないな?」
睦月にがっつり怒られた。
だって好きだったから。聞こえちゃって。
そんなこと言ったら言い訳になっちゃうね。
話しかけれなくて、何も言えないでいたら。
やっぱり睦月は私のことを理解してくれた。
「不安になったよね。ごめんな。大丈夫だから・・・」
そして優しく包み込んでくれて。
やっぱり睦月の臭いは安心できて。
私は好きだな。
「盗み聞きしてごめんなさい!!!話しかけにくくてね。聞いてたら私の話してて。別れたくないよぉ。」
あぁ。また涙がこぼれてきた。
「俺もだよ。愛してるから。」
そう言って自分の唇に生暖かいものを感じる。
あぁ気持ち悪くない。睦月なら大丈夫なんだ。
あの人だったら悪寒が走ったのに。
忌まわしい記憶を封印できた気がした。
「私もだよ。」
愛してるは言えなかった。恥ずかしくて・・・
いつか言えるようにがんばるね。
お店のドアが開いて優雅ちゃんが遠慮がちに入ってきた。
「お取込み中良い?」
「優雅ちゃん!!」
「憐さん知らない?今日デートだったのにしらばっくれてんだよ~。もうだめかも知れない・・・嫌われたのかな。」
そう言って優雅ちゃんは泣きそうになっていた。
弱音を吐きながら優雅ちゃんはがんばってるんだ。
つなぎ止めるために。
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