届かぬ出ぬ声。
憐は家の前に車を止めて待っていた。
「憐!!どこか行こう~。」
「親には何て言ってきたの?」
「お泊まり・・・」
嘘だった。お泊まりなんて出来る場所がない。
憐だって忙しいだろうし。
邪魔できない。どうしよう。戻るのも何か嫌だ。
野宿したって良いよ。
家にだけは戻りたくない。
「じゃあ俺の家においで。」
憐は今までそんなこと言ったことなかった。
何か有ったんでしょう?
「けど、明日は学校・・・」
「道具もどうせ鞄の中に入ってるんでしょ?送っていくよ。」
「憐は忙しくないの?」
私が気にしていることはそこだった。
憐の重荷にだけはなりたくない。そう思っていたから。
憐に嫌われるのも憐の重荷になるのも嫌っていた。
「忙しくないよ。」
憐の態度が明らかにおかしい・・・
いつもそばにいるから分かるんだよ?
「憐・・・何かあった?」
「何で?何もないよ。」
「本当に?」
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