届かぬ出ぬ声。
「睦月さん・・・」
さん付けで呼んでしまった。
付き合ってからは止めていたのに。
「麗子?」
「私もうだめかも知れない。嫌だ。恐い。」
睦月とあって私は泣き虫になったみたい。
いつも泣いてる気がする。
たぶんこれが私の本当の姿。
だって、何か睦月と居ると全ての感情が抑えられなくなって。
「大丈夫だよ。ほら。ヨシヨシ。」
そう言って睦月はいつも頭を撫でてくれた。
安心できて、睦月が好きで。
私は愛されてるって実感できて。
これ以上は無いって言う感覚に陥った。
しあわせすぎて私は感覚がなくなってきた。
「如月!誤解解くように全部はなせ。」
「嫌よ。そんな小娘に何で睦月を取られなきゃいけないのよ。」
如月さんはキッと私をにらんだ。
だけど、現在の彼女は私だよ。
負けないから。
「睦月。もう誤解は解けたからいいよ。」
「そいつも言ってるし良いじゃない。帰るわ。お勘定。」
そう言って如月さんは机の上にお金を置いて行った。
私の横を通るとき小声で如月さんは
「絶対睦月を取り返すから覚悟しておきなさいよ。どんな汚い手を使ってもあなただけには睦月を渡さない。」
宣戦布告。
私は全てが如月さんに劣っていると思う。
だけど絶対睦月を渡したくないと思った。
「負けませんから。」
知らず知らずのうちに口から出た言葉だった。

これは本音だから。
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