あの頃の俺はきっと嘲笑うのだろう
引かれた縄からか、出口より白く細い手が最初に露になり、そしてそこから姿が現れた


ランスロッドの深緑の眼が、より一層深くなる


眼に写る漆黒にランスロッドは身動きができなかった


他のモノたちとは断然違う、紅い上等な衣に身を包み…それがより映えるような長い漆黒の髪


そしてそれと同じ色の大きな瞳が、長い睫毛に護られるようにあった


それは今まで生きてきた中で、もっとも美しく、初めてみた気高さだった


「…皇帝?」


ただ無言でそれを見つめていたランスロッドを不思議に感じたのだろうイラリオが声を掛けたのだが、それにすら耳に入らないのだろう
ランスロッドは変わらずそれを見つめていた




 
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