あの頃の俺はきっと嘲笑うのだろう
「………………は?」


え、?
と意味がわからずフリーズする
こいつは今、何と言ったのか


―――大嫌い?


自慢ではないが、今まで生まれてきた中でましてや女に「嫌い」など言われたことなど、一度すらない

皆、この俺の容姿、地位、財力の申し分ない…いや、むしろ勿体無さ過ぎるぐらいの俺を好意的に思っている

なんせ、今まで言い寄ってきた女や周りにいる奴らが皆そうだったのだ


目の前の漆黒を見ると、また目が合う
そしてドキリ、と大きく体が跳ねた


「大嫌いだ…」


そう言う女の漆黒の瞳は、少し湿って揺れていた


「……っ」


先程と同じ様に体が波打つような感覚に陥るのだが、少し違った
何故か、小さな小さな痛みが胸に走り、苦しくなった


やはり今日は体調が優れない


急な襲撃は容易に避けられたが、気分が悪い
これは気だるさでも風邪からでもない
自分の体が分からない






 
< 15 / 20 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop