あの頃の俺はきっと嘲笑うのだろう
ふわり、…


訳がわからず見つめていた女の黒髪が艶やかに揺れたかと思うとカラン…、と金属の音とドサリ、と女が崩れた音がした


そして女が崩れた後ろから姿を現したのは、もう見慣れたオレンジ色の髪


「大丈夫?
皇帝」


ヘラッ、と笑ったこの男が手を構えていたことに「あぁ、手刀を食らわしたのか」と理解する
下に眼をやれば、漆黒の、地面に這いつくには似合わない女が気を失って横たわっている


「…で、皇帝
コレどうすんの」


イラリオが女を見て問うたが、それには答えず近くに落ちている剣を拾うと、ランスロッドはそれを持ち主である商人に向けた


「おい、返すぜ」


「ひっ…、あ…」


差し出した剣を恐る恐る受け取った商人を見て情けねぇなと思う
どうやら、俺を怒らせたと感じているのだろう
なんせ己の商売道具が、己の主に剣を向けたのだ


「も、申し訳ありませんっ
こいつの体罰は後程、厳重に致しますので…っ」





 
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