あの頃の俺はきっと嘲笑うのだろう
「……体罰、?」


何故か勝手に口をついて出た問いただす言葉に商人は平伏しながら素直に答えていく


「はっ、はい!
貴方様のよもや御命を討とうとなさった故、わたくしめからコレに強く体罰をしておきます
ですから…、ですから何卒わたくしめのお命は……!!」


「………」


無言で見下ろすと、地に頭をつけた男が目に映る
醜いな、とランスロッドは眉を潜めた
何故か、本当に何故かは分からないが、目の前の男に対して無性に腹がたったのだ
なんなのだ、先程からのこの気持ちは。
本当に自分なのか、と分からなくなるぐらいに精神が不安定だ


――――元はといえばこの奴隷のせいだ


ちらり、と横を見やる
不似合いに地について、横たわる女
伏せられた長い睫毛が…揺れたのを見て、不思議に己の心臓も揺れた


「…あの、…?」


何も言わないランスロッドに恐ろしく思ったのだろう、恐る恐ると男は伏せていた顔を上げる


そんな男の声に、ランスロッドは何かに気づいたように浅く笑った






 
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