あの頃の俺はきっと嘲笑うのだろう
そういい整端な顔に嫌な笑みを浮かべ酒場を出ると港へと足を向けるランスロッドにイラリオも無言で続く


喋りに限ってはランスロッドと同等に口を交わす彼でも、行動などはそこらのいち兵士よりも遥かに主に忠実である
イラリオは彼を咎める事はあれど、止めることはしない





「国王陛下、」


ざざーん…という海の音を背景に一人の商人が畏れ多そうに平伏する
それを目にしたランスロッドは彼を見下し腕を組んだ


「…到着が遅れたな」


低く呟かれた言葉に商人が一際大きく震えたのをイラリオは見逃さない
兎の如く弱々しい商人をみて情けなくなる
だが、だからといって口を挟む義理の欠片もこの商人には無い


「ほ…っ、北東より、伝達がありまして…!」


「へぇ、?」


伏せた顔からは分からないが、きっと商人の顔は青ざめているのだろう
そんな男をランスロッドは面白そうに見つめ内心で悪態をついた


あぁ、やはり…
―――愚民は平伏す姿がよく似合う、と…






 
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