【モテ期到来】




俺は付け合わせのニンジンまで綺麗に完食し、「ごちそうさま」と言って席を立とうとした。




「太一、ここのパンナコッタ旨いらしいぞ。食ってけよ。」




「えっ、マジ!?食っていいの!?」




岸の言葉に反応しちゃった俺って、ホント馬鹿なんじゃねぇの!?




つか、今岸は手の平で俺を転がしてんだ。




結局逃げ出せず、俺はここに2時間拘束されたのだった。




その場から解放され携帯を開くと一時間ちょっと前にアカリから着信があったらしい。




俺は帰り道に歩きながらアカリに電話を掛けた。




「電話したんだよ~?」




「ああ…ごめん。寝てて気付かなかった。」




俺はアカリに“嘘”をついた。




昨日あれだけの事があったのに本当の事なんて言えねぇよ…。




“彼女を傷付けないため”




自分にそう言い聞かせ、後ろめたい気持ちを正当化する。




「朝早かったもんね!」




何も知らないアカリは疑いもせずそう言った。




…胸がチクリと痛んだ気がした…。





   ◇◇◇◇◇◇◇◇


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