【モテ期到来】




「お前なんか心配してねぇけど、俺が何か嫌…。」




「意味わんない…」




「俺もわかんねぇ。」




そう呟いて起き上がると太一は被っていたキャップを私に被せた。




「それやる。…次キャッチボールするとき被って来いよ。」




本当に不器用なヤツ。




私はクスッと笑いながら「うん!」と返事をした。




「太一…ありがとう。」




「別に。」




ちょっと照れた太一とキャッチボール。




「また出来るんだ」と思うと素直に嬉しかった。




太一は彼女が出来てもやっぱり“太一”のままだったし、私に対しての態度も変わらない。




8月に入ったある日、バッティングセンターで会った太一は様子がおかしかった。




「なんかあった?」




「なんで?」




「なんとなく…疲れてる感じがする。」




バットに当たったボールも思った方に飛ばないみたいで、イライラしているのがわかる。




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