前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―
まだ軽く荒呼吸を繰り返す俺に、さあもう一度キスだと鈴理先輩。
実はディープキスにも種類があるから、それを試しながらじっくりとあたしを覚えような、とウッキウキ声で仰ってくれる。
マジっすか。
今さっきのキスだけでもう、俺、アップアップなんっすけど。
「むりっす」もうちょい休憩したいとギブアップしてみるけど、「仕置きはこれからだぞ」したり顔で笑っているであろう彼女が無慈悲なことを告げた。
「あたしの最大の目的は、キスをするだけで欲情してしまう空を作り上げることだ。
そうすれば、嫌でもセックスしたくなるだろ?
寧ろお誘いとかしてくれた日には、日々持参している道具やらなんやらでかなり張り切るぞ。
さあ、欲情できるよう頑張ろうな。
田中が戻ってくるまで20分はあるだろうから、20分、余す事無くキスを堪能してヤらしー体になるようお互い努力しよう」
!!!!
そ、そんなえげつない目論見があったんっすかっ!
ちょ…、ちょぉおおお、そんな悪巧みを聞いた後にもっぺんキスとか無理っすっ。絶対無理っすっ!
仕置きだろうがなんだろうが、今すぐに目隠しは取るっすよっ!
というか冷静に考えれば、被害者の俺がなあんで仕置きなんてっ、御堂先輩が全部悪いのであって俺に非はない筈っす!
もう十二分に仕置きは受けっ、うわああっ、ちょ、ちょぉおお先輩!
「んんんっ!」
くぐもった悲鳴を上げる俺に焚き付いたのか、彼女は合間合間に「二度と他人に触らせないようにしてやる」などと高らかに大宣言。
「よりにもよってあの好敵手に触らせたんだっ。たーっぷり、体に教え込んでやるからな。あんたがあたしの何か、身の程を持って知れよ」
お、怒ってる! 見えないけど彼女のオーラに怒気が纏ってる!
先輩っ、俺が思っている以上に怒ってっ、「イ゛っ」耳齧ってきたしっ!
なんか艶かしい空気になってっ、うわぁあああ田中さあぁああん早く戻って来て下さいっす!
じゃないと俺っ、おれっ、マジで食われるっ!
セックスなしって先輩は言ったけどっ、この雰囲気じゃ彼女の理性がどれだけ持ってくれるかっ。
いっつも思うけど、俺ってどぉおしてこう、自分で自分の首を締めちまうようなことをしちまうんだろっ―――!
どう後悔しても後の祭り。
俺は過去にないほどの仕置きを食らい、スンゲェ恥ずかしい思いをしたんだけど、それは後日談としていずれ語らせてもらおうことにしよう。
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