前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―


「豊福空、此処は行くべきだぞ。未来の旦那、ん? 妻のために親密になるべきだ!」

 
高間先輩が俺の横に立って大主張。「そうだそうだ」行って来いと柳先輩も便乗してくる。

つくづく御堂先輩と俺の仲を取り持ちたいようだ。

追い詰められている俺は眉根を寄せるばかり。

そんな中、鈴理先輩が邪魔立てする親衛隊にこのようなことをのたまった。


「あんた達。もしもあたしと空の仲を応援しないのなら、あたしは親衛隊の存在を総無視してやる。空気扱いにしてやるからな!
よって仕置きも何もせん。今すぐ空気扱いにしてもいいんだぞ」


ががーん、親衛隊は凄まじいショックを受けたような顔を作る。
 
M族の親衛隊だけど無視は堪えるらしい。
寧ろ空気扱いは宜しくないらしい。

まあ確かに鈴理先輩に構ってもらうことで、彼等は生粋のMになれるわけでして。
心身Mになれるわけでして。

構ってもらわないとなじられも何も畜生もない。

特にショックを受けている隊長と副隊長は手の平を返したかのように、「断るべきだぞ」「アイドルの言うことは聞け」まーったく正反対のことを助言してくる。


パキパキ、関節を鳴らす音が何処からともなく聞こえてきたために、親衛隊も追い詰められていた。


鈴理先輩に味方すれば御堂先輩からの鉄槌は確実、御堂先輩に味方すれば鈴理先輩からの総無視は確定、究極の二者択一だ。

どちらを選ぶこともできない親衛隊と肩を並べている俺もまた、究極の二者択一を迫られている。


いや分かってるよ。

彼氏の立場だったら彼女を選ばないといけない。
それは分かっているんだよ。

優柔不断だと罵られるかもしれないよな、俺の態度! 


だけど俺の立場に立たされてみろってっ。

誰だって助けてくれた御堂先輩を一蹴したら最後、良心の呵責に悩まされるから!

助けてもらった分際で、お前何様?! になるって!


……だけど鈴理先輩も全力で俺を助けに駆けつけてきてくれたわけで。
  

返答待ちのあたし様、プリンセスの視線を一身に浴びた俺は「じゃあ間を取って」助けてくれたお礼をするというのは、と愛想笑い。
 

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