前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―
「―――…はい、はい、じゃあ明日に。でも本当に大丈夫っすか? 急に明日にしちゃいましたけど。あ、はい。ではまた明日に。おやすみなさい」
携帯の電源を切った俺は、「明日に決まっちゃったよ」ドッドッドと心臓を高鳴らせて机に伏す。
俺から誘った手前、緊張するってのも変な話だけど、めっちゃ緊張するーっ!
どうしよう、明日になっちまった、なっちまったぁああ!
今日はゆっくり眠れるかな、緊張のあまりに眠れないかもしれない。
だけど眠らないと明日はもっと緊張で眠れない気がっ、お、おぉおお俺は鈴理先輩をお誘いしちゃったんだよぉお!
夕飯は勿論なんだけどっ、それよりもなによりもっ。
「空さん、鈴理さんは明日いらっしゃるの?」
「え、あ、ああぁあうん。と、泊まりに来れるって。明日は丁度金曜だし、土曜の補習もないから泊まりに来るって」
そう俺、豊福空は大胆不敵にも肉食お嬢様を家に招いた上にお泊りに誘ったのだった。
前々から泊まりには誘おうとは思っていたんだよ。
以前、お邪魔して、あーだこーだやーんあっはんうっふん…、……、あれおっかしいなぁ、襲われた思い出しか出てこないぞ。
いかんいかん、お世話になった記憶がある筈だろ。
ほら目を閉じれば、来て早々働かせられた執事修行。
竹光さんにビシバシ指導された末路は投げ飛ばし…、肩を強打したっけ。
んでもってコスチュームプレイを強いられ、縛られた上にキスを散々しまくった。
いや、あれは俺が誘ったんだっけ。
それから色々あって就寝時間に危うく食われそうになったという。
………、やっぱり襲われた記憶しか出てこないっ!
俺の貞操の危機が大半を占めている!
(うわぁあああっ、風呂とか一緒に入ったんだっけ! あの時はマジっ、死ぬかと…、先輩の谷間、今だって思い出せそうっ…じゃなぁあああい! 俺なんて土に還ればいいんだぁああああ!)
頭を抱えて誘って良かったのかと呻く俺に、「どうしたんですか?」母さんがパチクリと目を瞬かせる。